無辺世界

words for world world world
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- -
こうごうせい

 
 たとえ、(ずっと                )も、いつか(             日が     )としても、それでも、わたしたちが共有している今は、とても貴重で、特別な時間なんだって、信じていたい。それだけです。祈ることすら苦しくて、ただもう、それだけです。

 
 
 短歌 of the week:
 歯みがきをしている背中だきしめるあかるい春の充電として (伴風花)

日常 20:30 comments(0)
後藤正文2万字インタビュー


 今月の20日に発売されたロッキング・オン・ジャパンの特集は、アジカンの後藤正文の2万字インタビュー。そうと知っていたら発売日にきちんと買っていたのだけど、この一週間ぬぼーっと過ごしていたせいで、昨日の夜まで気付かずにいた。わたしのばか! 後藤さん本人が公式日記でこのインタビューについて言及しているのを読んで、ようやく気付いたのだ。

 なぜ今まで2万字インタビューを受ける気にならなかったのか、一生引き受けるつもりはないと決めていたそのインタビューを、なぜ今回引き受けることにしたのか。それらの理由が、日記のなかで丁寧に語られていた。語られている理由がまたね、どこまでも後藤さんらしくて、じーんときてしまったよ。

 「雑誌で自分の半生を語ることって、余程自分のことが好きでないとできないだろうなという印象がずっとあって、自分はそういう類の人間ではないと思っていたことがひとつ」

 この理由には、単純に「ああそうだよなあ」と納得。民法でのテレビ出演がほとんどないことからもわかるように、アジカンはメディアに向けてぐいぐい自己主張していくようなバンドではないし、たまにテレビで喋っているのを見ていても「この人たちほんとにシャイだなあ」と思わざるを得ないようなトーンの喋りかただし。バンドのフロントマンが皆、自分のことを話したいかといったらそうではないんだよなーと。

 まあ、ここまでは普通に「うんうん」って頷きながら読んでいたんだけど、次に綴られていた理由にはガツンときた。自分のことを話したくなかったもうひとつの理由。

 「自分の目線だけで自分史を綴って、語って、そういう場合は大概、そこに出てくる家族だったり、友人だったり、そういう人たちの目線は除外されてしまうというか、どれだけ想像しても重なり合わない部分もあるだろうから、結果として誰かを傷つける可能性があるということがひとつ。そういう想像力の欠如は、自分が歌っていることとは真逆に位置するから、実際にインタビュー中にもこのことが頭を離れなかった」

 自分自身の性格がどうとか、そういった個人的な理由によるためらいだけじゃなくて、「誰かを傷つける可能性」についても思考が及んでいる。ため息がでちゃう。なんていうか、もう、後藤正文ってどこまでも後藤正文なんだなあと思った。後藤さんってば、どこまで誠実で、どこまで真面目なんだ!(どこまでもか!)

 ただ、わたしがいくら感服したからといって、こんなところで後藤正文の人格を崇め奉るのも間違っているのだけど、でも、わたしも「後藤さんいい人!」とかそういうことが言いたいのではないんだ。そうじゃないんだ。後藤さんはどこまでも後藤さんで、こういう人だからこそ『ファンクラブ』とか『ワールド ワールド ワールド』を生まれたんだなあ、って、この人が作った『ファンクラブ』『ワールド ワールド ワールド』だから、楽曲が説得力をもってわたしの胸の奥にずしんと響いたんだって、そういうことが言いたかったんだ。作品と、それを作っている人とが全くぶれていない。だからアジカンの音楽は信頼できる、これからも信頼していいんだと思ったんだ。

 さてさて。この日記を読みながら、ロッキング・オンを買いに走りたくてうずうずしていたけど、見事に真夜中でして。今朝ようやく手に入れて、ドキドキしながら読みました、2万字。その2万字インタビューの中身についても、この場で少し触れておきたかったけど、後藤さんの日記に「読んだことは心の奥にそっと仕舞うか忘れるかしておいて下さい」とあったので、やめておこう。

 ひとつだけ書いておきたいのは、2万字インタビューを読みながら、12月に行われる武道館公演のチケットを買ってしまったということ。昨日の夜から、チケットがまだ完売していないことに気付いていて、がっつりいっとくか自重すべきか悩んでいたのだ。ロッキング・オン読みながら、もう行くしかない、と思った。いつものように2枚買ってしまったんだけど、これまたいつものように、一緒に行く人が決まっていません。ま、どうにかなるさ。 

 まだアジカン以外の記事は読んでいないけど、アジカンメンバー全員によるニューアルバムのインタビューも充実していたし、チャットモンチーのインタビューもあるし。ということで、今月号のロッキング・オン・ジャパンの★は五つ星にしておきました。

 「私は、あなたが今日食べた野菜を、農業を営む名前も知らないひとが自分の普段の暮らしぶりをあなたにアピールすることもなく、ただ丹精込めて野菜作ったように、そうやって日々の暮らしの中で音楽を作りたいと思う。これはもちろん、人前に出る私たちにとっては極端な例え話だけど」

 ASIAN KUNG-FU GENERATION 後藤正文 公式日記
 http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AKG/diary/index.html  

音楽 15:11 comments(4)
日常に潜むポエジー


 録画されていた昨日の「ゴチ」(ぐるナイ)を見ていたら、思わぬところにポエジーって潜んでいるんだよなぁということを、ふいに思い出させられた。何気ない会話のなかに、詩的なことばが潜んでいたりする。日常のなかのポエジー。これに関しては、穂村弘と一青窈の対談の一部に、わかりやすい具体例がある。 

穂村 そうそう、こないだ、菊人形展に行ったんですよ。菊の花がいっぱいあって、すごい数。そこに中学くらいの三人連れの女の子が来てたんだけど、一人の子が「これ全部菊かもしれないんだって…」って言ったんです。そしたら友だちが「“かもしれない”じゃなくて菊なんだよ!」って。(笑)「だって菊人形展って書いてあるじゃん」って言うわけ。で、言った子は黙っちゃったんだけど、僕、そのとき「これ全部菊かもしれないんだって」っていうのは詩だと思ったの。
一青 うん、うん。
 
一青窈×穂村弘 対談 
『広告批評』 2006年3月号 特集「歌のコトバ」 より。

 たくさんの菊に囲まれているという状況があまりに非日常的で、信じられなくて、思わずもらした「菊かもしれない」という言葉は、たしかに詩的だなあと思う。

 わたしも一度だけ、似たような感覚に陥ったことがある。渋谷のとあるパスタ屋さんにて、友人が海外へ行った際に撮った、たくさんの風景写真を眺めていたときのこと。現地の雰囲気やそこで起きた出来事などを、写真を一枚一枚見せながら、友人は実にたのしそうに語るので、わたしはすっかりその“写真のなかの世界”に魅せられていた。そして、ある一枚の写真に行き着いたときに、わたしは思わず「写真みたい」とつぶやいていたのだ。

 写真みたいって。 写真なのに! 写真なのに! 

 残念ながらどの国の風景だったかは失念してしまったのだけど、その写真は、オレンジが路上で売られている様子を写した静かな写真だった。静かな写真だったけど、荷台にたんまりと積まれたオレンジの迫力には、何とも言えない臨場感があったのだ。写真は生きていて、今にも現地の匂いを嗅げそうだった。

 それならば「写真じゃないみたい」って言ってしまいそうなものだけど、不思議なことに、そうはならなかった。菊人形展で、少女が「全部菊なんだね!」ではなくて、「全部菊かもしれない」と口走っていたことの不思議と、勝手ながら近いものを感じる。そして、この種の不思議のことをポエジーって呼ぶのかな、なんて、ぼんやりと思う。

 友人の語り口と写真の生々しさに惹き込まれ、わたしは、現実世界を忘れてしまったのだ。あの時、わたしはどこにいたのだろう。あの一瞬のトランス状態と、直後の陶酔感は今でも忘れられない。あれは貴重な体験だったなあと思う。

 なぜ、ゴチを見ながらポエジーについて考えさせられたかと言うと、ナイナイの岡村さんが仔羊を使ったイタリア料理を食べながら、「お肉みたい」って言ったのだ。びっくりした。たしか、「お肉じゃん」って誰かにつっ込まれてたと思うんだけど、その辺の記憶はあやふや。よっぽどおいしかったのだと思う。

ことば 21:55 comments(2)
逃げ腰


 アジカンの後藤さんが、10月16日付の公式日記で、チャットモンチーの新曲について述べていた。

追伸。
チャットモンチーの新曲がスゲー良いなぁ。 
女の子がポロっと言うことって、いつでも嫌になるくらい正しい。
男の子よりも言葉との距離が近いというか。
頑張って言葉を探求して「詩人になりたい」とか言っている男の子の一言を、
いとも簡単に女の子たちは追い越してしまう。
うーむ。
だから私は女の子が苦手なんだ。ははは。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 後藤正文 公式日記      http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AKG/diary/index.html

 この人はたしか、「恋愛スピリッツ」のときも、「女の子ってこんなこと考えてるの?こわいなあ」と言っていたように記憶している。「恋愛スピリッツ」とは、チャットモンチーのボーカル・えっちゃんの実体験を基にして書かれた不毛な恋の歌である。自分自身が経験した恋愛の痛みを、全くオブラートに包むことなく、自分の言葉で、声で、ギターで、これほどまでに痛切に歌い上げることができるのか。そんなことができてしまうのかと、何度聴いてもおののかずにはいられない歌だ。新曲の「染まるよ」には、そんな「恋愛スピリッツ」と同じようなひりひり感を感じる。むきだしのたましい。

 あーあ! 後藤さんってば。わたしだって、女(の子)だけど、チャットモンチーの歌を聴くのがときどきこわい。それはたぶん、くるりを聴くのがこわい気持ちと少し似ている。彼らはいつもほんとうのことを歌っている。わたしは無防備で、逃げ腰だ。

音楽 20:41 comments(0)
ただただただただ




 短歌 of the week:
 書くことは呼吸だだからいつだってただただ呼吸困難だった (枡野浩一) 

日常 22:54 comments(0)
染まるよ

 えみ専属(?)チャットモンチー広報のゆきちゃんから、「新曲がネットにアップされてるよ!」との情報を得たので、いそいそと探してみる。そして見てみる。打たれる。

 なにこれすんごくいいじゃない! 

  

 あなたの好きな煙草 わたしより好きな煙草

 染まるよ / チャットモンチー
 http://jp.youtube.com/watch?v=kcWMgZD7W0Q&fmt=18

 ああ、なんていうかもう、ひりひりする。すごいわこれ。

 はいはい普通のミディアムテンポの曲ねって思いながら聴いていたら、ところどころアレンジにびっくりするところがあって、特に2:35〜の展開には、一瞬何が起こったのかと思った。その後の歌詞もまた、もうどうしようもないなあ、どうしようもない気持ちになるよ。 

 チャットモンチーの歌詞って、決して真新しいことを歌っているわけじゃないのに、どうして心の底までこんなにもビーンと響いてしまうんだろう。今回の作詞はえっちゃんかなあ、あっこちゃんかなあ(チャットモンチーはメンバー全員が詞を書く)と、気になって調べてみたら、作詞はベースのあっこちゃんでした。

 「この歌詞を絵莉子が歌えば、必ずいい摩擦が生まれると思った!」だそうです。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080903-00000004-exp-musi

 そうそう、今回の曲は、亀田誠治が初めてサウンドプロデュースに関わるということもあり、実は結構前から注目していたんだ。予想以上だった。いい摩擦、生まれたと思います。発売は来月の5日。

音楽 18:24 comments(8)
写真をいくつか交えつつ。

10月5日、日曜日。地元仲間のアキ嬢と昼ごはんを食べた。写真はアキにもらったベトナム土産。わたしが金魚好きということを、頭のどこかで覚えていたらしい。すごい。アキの贈り物はいつもセンスがいいなあと思う。使い道に迷っていると、父が日本酒を飲もうと言うので、ならば、と、早速その日の晩から使わせてもらった。

 ちなみに、先ほどの日記の続きじゃないけど、アキとはこの日、略奪愛の話で盛り上がった。最終的には、『天使なんかじゃない』のマミリン、あれはいい、あれはいい略奪だ!、というところに話が落ち着く。正確に言えばマミリンのあれは略奪愛ではないのだけど、そんなのどうでもよくなるくらい、見境なく盛り上がった。そして、アキ嬢といると毒舌が進む。この日もまた、好きな男の人にはとうてい聞かせられないような話をたくさんしたのであった。 

   
 
 10月7日、火曜日。朝顔は上を向いて咲いていた。ありがとう、と思う。写真ではうまく伝わらないが、同じ青い花でも日によって青色の具合がちがう。毎日毎日、青い花に魅せられてばかりいるせいか、青い花の服を買ってしまう。今日、ひさびさに行った幕張のアウトレットにて。ひとめぼれだった。素材がてろんてろんで薄いので、出会うのが遅かったという感はある。いや、どうにかこうにかして重ね着してみたい。今ごろになって咲いている朝顔だって季節はずれなのだから、わたしだっててろんてろんしたっていいじゃないか、という気分になる。今の流行りはチェック柄なのだけど、どうも花柄のほうに心は傾いているようで。気持ちがトレンドについていかない。
    

10月12日、日曜日、お昼。3連休のどまんなか。とよこと会った。ひさびさに会えて、うれしいやらほっとするやら。駅前のエクセルシオールにて。何時間も入りびたり、2回も注文。メニューが充実してるし、落ち着くし、学生のころから大好きなお店。右に見えますのは、ほっとしたついでにケーキまで食べちゃいましたの図。「特別な誰かと一緒においしいものを食べることほど贅沢なことはない」ということを再確認できたのでよいのです。このモンブランもとてもおいしかったけど、新メニューのティラミスラテはかなりの美味。行く機会のある方は是非。 http://www.excelsiorcaffe.com/
 
 とよこと話していると時間があっと言う間に過ぎるのだけど、あれこれ話している最中は、とてもゆったりとした時間が流れているのを感じる。この日もいろいろと、実にいろいろと話したのだけど、「怠惰こそが最大の敵!」というのがひとつの大きな結論。とよこは、何やら覚悟を決めていろいろとがんばっているようで、とても心地のいい刺激を受けた。

日常 00:39 comments(8)
ねんごろになあれ


 ところで、私は友人が女の子を産むと、その女の子に対し、いい女になりなさいね、いい女になって、将来男を泣かすようにね、と、思う。友人が男の子を産むと、その男に対し、いい男になりなさいね、女を泣かせたりしない、いい男になるのよ、と、思う。
 
 ―江國香織 『泣く大人』 より。

         

 もう、ずいぶん前の出来事のような気もするが、Dからひさしぶりに電話があった。Dは高校時代の同級生で、今もたまに飲んだりする男友だちである。

 ぽつりぽつりとお互いの近況を報告し合うなかで、Dが最近彼女と別れたことを知った。「悪いのは俺なんだ」とDは言う。「浮気でもしたの?」とわたしは訊く。できるだけ明るく。結婚したいけどしたくないという迷いがあることは前に聞いていたし、「もっと他の女の子とも遊んだりしたい」とこぼしたりたりもしていたので、別れたと聞いてもそれほど驚かなかった。

 驚きはしなかったけど、傷ついた。「俺に好きな子ができちゃったんだ」という一言に傷ついた。「車買い換えたんだ」って言うみたいな調子で言うんだね。みんなそうなの? そういうものなの? 新しい「好きな子」は今の「彼女」でもあるらしい。モデルみたいにスタイルがいいのだそう。ふーん。よかったじゃん。

 傷ついたのちに、なんでわたしが傷つかないといけないのさ!という、苛立ちのような感情がじわじわとわき起こる。わたしは、「好きな子ができたから」と振られたDの元カノとは全く面識がないし、長年の友人であるDが幸せになることを望んできたわけだし、傷つく理由などないはずだ。それなのに、新しい彼女の話を嬉々として語るDの幸せを素直に喜んであげることができなかった。もちろん、Dには幸せな恋愛をしてほしい。不幸を望んでいるわけじゃない。そうじゃないんだ。でも、なんでかな、まるで自分が言われたことのように傷ついてしまったのだ。

 その後、わたしの恋愛はどうなっているんだって話を振られたけど、思いっきしぶっきらぼうに「普通!」とだけ答えておいた。「なに普通って?」 普通は普通だよ。そうとしか言えないんだよ。

         

 とまあ、こんな調子で、「彼氏が彼女を振って新しい彼女をつくる」という話には不覚にも傷ついてしまったわたしだけど、視点が変わってこれが「新しい彼女」側から語られる物語となると、わたしの気持ちもちょっと変わってくるのである。

 つまり、こういうこと。女友だちの「好きになった人の彼女から彼女の座を勝ち取った!」なんて成功談を聞くと、わたしまで「よし!よくやった!」とテンションがあがってしまうのである。また、親しい女友だちから「気になってる人に彼女がいるんだけど…」なんて話を持ちかけられた日には、もう大変。「奪ってしまえー」「略奪してしまえー」「しんみつになってしまえー」「ねんごろになってしまえー」とひたすら煽って煽って、気付けば当事者より盛り上がっている始末。つくづくわたしって現金な奴だなあと思うのである。ってか、ねんごろって。

 まあ、そんなこんなで、冒頭に紹介した江國香織のエッセイを思い出したのだった。香織に言わせれば、「いい女は男を泣かせるが、いい男は女を泣かせたりしない」「いい男のために、女は勝手に泣くのであって、泣かされるわけじゃない」のだそうだ。ま、そういうわけなんでよろしく。

日常 22:40 comments(5)
オクターヴ

秋山 はる
講談社
¥ 1,780
(2008-08-22)
Amazonおすすめ度:

 ※現時点で☆印評価をつけられるような作品ではなかったので、評価は省略。

 たじまくんに薦められたので買ってみた。家に帰るやいなやトイレにこもって一気読み。長居するつもりはなかったのに、最初から最後まで便器の上で読み干してしまった。一読して思った。なんだこれはと。とんでもないものを手にしてしまったと思ったよ。こんなにピュアでエッチな漫画は初めて読みました。ピュアでエッチと言うよりも、ピュアなエッチの漫画なのか、これは。だめだ、言葉をこねくりまわしてもこんがらがるだけだ。

 主人公の雪乃は、18歳の元アイドル。15歳のときにデビューしたが全く売れず、紆余曲折を経て、現在は所属していた事務所の裏方として働いている。雪乃は「彼氏がほしい」と思っていて、人並みに性に対する興味も抱いているんだけど、男の人を知る前に女の人と体の関係をもってしまう。その女の人は節子さんというこれがまた魅力的な女性で、雪乃はだんだん彼女に対する恋心を募らせていく。

 というお話。いわゆるガールズラブ、百合漫画ってやつですね。ドキドキしながら読んだ。性描写がどうこうとかそういう単純なドキドキじゃなくて、なんだろうなあ。あまり読んだことのない同性愛の話だから刺激的で、というドキドキ感でもなさそう。この生々しさはなんなのだろう。言葉として適当かわからないけれど、「身体性をゆさぶられる」という感覚をもった。うーん。うまく言えない。

 つい先日、志村貴子の『青い花』という漫画を読んだのだけど、同じように女の子同士の恋愛感情を描いていても、こちらはまだ客観的に読めてしまったという感じだった(歯医者の予約時間に急かされながらの立ち読みだったから、きちんと読んだとは言えないかもしれないけど)。第一印象としては、微笑ましい話だなあという感じ。でも、『オクターヴ』のほうは、内側から刺激されるというか、自分自身の問題としても読めてしまった部分があって、少なからず動揺した。
 
 なんでこんなにゆさぶられたのか、はっきりとした理由はわからない。でも、そもそも性というのはゆれてしまうものではなかったか。

 たとえば、自分がヘテロ・セクシュアルだということは、よく考えてみると不思議なことだ。当たり前のように男性を好きになって、今日まで生きてきたわけだけど、だからといってそれが一生続くとは限らない。「女性だから男性に恋愛感情をもつ」ということは別に当たり前のことではない。いろんな性的志向があるうちのひとつに過ぎない。と、大学のゼミでジェンダー・セクシュアリティ論を勉強したことを思い出す。性の問題を男と女という二元論にはめ込んでしまうのではなく、100人いれば100通りの性の形があるという風に考えるということ。  

 話が脇道にそれてしまったけど、性のあり方(それがたとえ自分自身の性であっても)を決めてしまうことなどできないということを思い出したのだ。

 『オクターヴ』は、女同士だけど相思相愛、めでたしめでたしという漫画ではない。これから男性との関わりもあるんだろうなあと予感させられるような伏線も張られていて、男性経験のない雪乃はどうなってしまうんだろう、ふたりの関係はどうなってしまうんだろうという不安が残る。今後の展開に期待したいような、こわいような。あと、これは完全にひとりよがりな意見だけど、節子さんってなんとなく幸せになりにくいタイプだろうなって直感的に思った。

 Amazonの表示価格が1780円とやけに高いけど、実際の定価は500円ちょっと。わたしは普通に地元の書店で買いました。

読書 02:07 comments(2)
「街のあかり」と「街の灯」

評価:
アミューズソフトエンタテインメント
(2007-12-21)
Amazonおすすめ度:

評価:
朝日新聞社
(2004-01-23)
Amazonおすすめ度:


 8月に観たアキ・カウリスマキ監督の『街のあかり』。どうやらチャップリンの『街の灯』のオマージュだったらしい。ということで、先日、遅まきながらやっと『街の灯』を観た。カウリスマキ監督の『街のあかり』も独特の味わいがあっておもしろかったけど、感動したのはチャップリンのほう。チャップリン、登場の仕方からしておもしろすぎなんだもん。

 「冴えない男があきらめずに奮闘する物語」という点で2作は共通しているけど、『街のあかり』が淡々とした映画であるのに対し、『街の灯』は終始ドタバタしたロマンティック・コメディ。また、前者のほうが主人公の孤独感が強く、カタルシスも薄い。『街の灯』のほうにより心が打たれたのは、はっきりとした救いがあったから、そして笑いの絶えない映画だったからなのかなあと、現時点では思う。チャップリンが少し動けば、その度にキラキラしたものが撒き散らされているような、そんな映画だったのだ。

 蛇足だけど、『街のあかり』でいちばん印象に残っているのは、主人公の男性が女の人と映画館に行くところ。観た人はわかると思うけど、あの姿勢はないよね。不自然に女性のほうに首を傾けているんだけど、その様子がすごく滑稽で不気味で、かっこ悪くて笑いました。でも最近気付いてしまったのだ。自分だって、好きな人と映画を観に行くと、結構な確率であのような姿勢をとっているということに。

 アキ・カウリスマキ作品の世界を堪能できるようになるまでには、もう少し歳を重ねなければならないかもしれないな。どんなに悲惨な状況に陥っても、頑なに自尊心を捨てようとしなかった『街のあかり』の主人公。いつかまた観てみたい。

映画 23:05 comments(0)
CALENDAR
S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< October 2008 >>
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
FRIENDS & FAVORITES
PAGE VIEW
WEBCLAP



ネコ温度計
FAVORITES
FAVORITES
FAVORITES
FAVORITES
FAVORITES
text
text (JUGEMレビュー »)
昆虫キッズ
PROFILE


SPONSORED LINKS