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人のセックスを笑うな (河出文庫)
評価:
山崎 ナオコーラ
河出書房新社
¥ 420
(2006-10-05)

とよこが貸してくれると言っていたけど待ちきれなくて、昨日の夜、『人のセックスを笑うな』を買った。お風呂の中で一気に読んだ。初めの2ページを読んだだけで、主人公「磯貝みるめ」に好感をもった。全部読み終わる頃には、ここ最近出会った恋愛小説のなかでこの小説がいちばん好きだと思った。こういう恋愛小説を私は読みたかったんだと思った。

ユリは映画のユリよりも頼りなく思えた。そして永作さんほどは可愛い容姿をしていないだろうなあという印象を持った。井口監督が撮影前に永作さんを整体に行かせた意味がなんとなくわかった気がした。映画に出てきたスピッツの「スパイダー」のアレは原作にはなかった。こうして原作を読むと、映画版は映画のために色々と工夫がなされていたのだなあと改めて感じられて、よかった。

劇場版『人のセックスを笑うな』に関する感想は以前の日記(こちら)を参照ください。小説版は山崎ナオコーラさんの一歩踏み込んだ描写がよかった。たとえばこんなところ。

 セックスできない期間に、足の裏の皮が剥けた。オレはハサミで、剥けている皮を切り取った。


私が今まで読んできた小説なら、この描写はここで終わっているだろう。でもナオコーラさんはこう続けている。

 セックスできない期間に、足の裏の皮が剥けた。オレはハサミで、剥けている皮を切り取った。
 その皮が愛しくて、手に載せて、心ゆくまで眺めた。


あるいはこんなところもそう。

 気持ちを整理するために日記を書いていると、涙がボタボタと落ちてくる。
 涙は快か不快で言うと、快だ。そしてまばたきで涙を落として文字をにじませる。


ここまでの描写なら、書ける人はたくさんいるだろう。でも、ナオコーラさんはこう続ける。

 気持ちを整理するために日記を書いていると、涙がボタボタと落ちてくる。
 涙は快か不快で言うと、快だ。そしてまばたきで涙を落として文字をにじませる。にじませたい文字の上にアゴを持って行ったりもする。


なんだろう。新鮮で刺激的、かつ心地よい描写がたくさんあった。譬えて言うなら腕のいい人にやってもらうツボ押しのような感覚。やんわりと気持ちの好いマッサージをできる人は多いが、そこから一歩踏み込まないと凝りは取れない。かといって、強く押せば押すほど良いというものでもない。ちょうど語りすぎる小説に興が醒めてしまうのと同じように。自分自身のどこが凝っているのか教えてくれる小説を私はいつだって待っていた。

全体を通して見たときに、この小説のどこがいちばん気に入ったかというと、それは「無理」が全くないというところ。展開に無理がない、設定にも無理がない。みるめが無理にユリに踏み込もうとしないところもいいし、ユリが無理にみるめと一緒に居ようとしないところもいい。みるめのえんちゃんに対する態度にも無理がないと思ったし、無理にユリへの思いを断ち切ろうとしないところも好きだ。なんて気持ちのいい話なんだろう。

「ただの不倫の話じゃん」

と言われればそれまでなのかもしれない。でも、「不倫」というあまりにも手垢の付いた言葉は、この物語には似つかわしくないと感じた。どろどろしているわけでもなしに。私はこの小説をとても新鮮な気持ちでもって一気に読みきることができた。ところどころ付箋をはさみながら。短篇「虫歯と優しさ」(こちらも好い!)も収録されていて、420円。安すぎでしょう。
読書 18:32 comments(5)
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- 18:32 -
COMMENT
あらあら読んだのだね。 さらっと読めるよね! 
たしかに不倫という言葉は似付かわしくない。 
永作博美だと少しきれいすぎるかも。 

皮のとことか、涙のとこ、私も覚えてる。「そうそう、どれだけ感傷的になってても、こういうことしちゃうんだよな」 
て。
| トヨペット | 2008/01/30 7:19 PM |
うーん、よさそうなにおいがビシバシ伝わってくるわー。読みたい本がある幸せってなんて前向き!
| ともこ | 2008/01/30 8:57 PM |
↑さすがに無理があるか…

to:トヨペット
うんうん。さらっと読めた。
永作博美だとたしかにきれいすぎるかもね。
でも華がないとお客さん集まらないしねえ。
うん、感傷に浸りすぎていないところがよかった。
そういう意味で「19歳」でよかったんだろうね。
もうちょっと若かったらもっと湿った小説になってたのかも。

to:ともこさん
おお。匂っていたようでよかったっす!
読みたい本があるってだけで一つの大きな希望ですよね。
本屋さんとか図書館に入ると安心します。


| ブラッド・エミット | 2008/01/30 9:33 PM |
初めまして。 emiです。
スイートリトルライズのあらすじをたどって、ココにたどり着きました。
自分と同じ名前だということ、自分と同じ年齢だということ…と
共通点が多く、嬉しいです。
[人のセックスを笑うな]は、映画で観ました。
本としても出てるんですね。 知りませんでした。
映画の映像の美しさ…というか、
映像のシンプルさ、主人公2人の会話の掛け合い・雰囲気等が
たまらなく好きで、お気に入りの作品でしたが、
えみさんの感想を読んで、自分も原作を読んでみたくなりました。
ほかの作品の感想も読ませていただきましたが、
えみさんの表現、とても素敵ですね。
さらさらと流れるように、言葉が入ってきて、
物語のイメージや世界観が、ものすごくすんなりと想像できます。
[スイートリトルライズ]や[童話物語]など、
紹介されていた沢山の作品を読んでみたいなーっと思いました。
| emi | 2009/06/24 10:12 PM |
to:emiさん
はじめまして!コメントありがとうございます。
すごい、おんなじ名前で年齢もいっしょ…!
「人のセックスを笑うな」はわたしも映画のほうを先に観て、
映画がよかったので原作も読んでみたんです。
主人公の会話よかったですよねー。ふつうの恋人同士に見えた!
今でもたまに観返したくなる映画です。本もいいですよ!ぜひ。
他の本の感想も読んでいただけたのことでうれしいです。
書いた甲斐がありました。どうもありがとうございます。
| えみ | 2009/06/25 10:48 PM |









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